2025年12月17日
こんにちは、ほしの脳神経・整形外科・在宅クリニック立川、院長の星野達哉です。
片頭痛の治療は、2000年のスマトリプタン承認以降、劇的な進歩を遂げました。現在では、4種類のトリプタン製剤に加え、ラスミジタン(レイボー)など、急性期治療の選択肢が豊富になっています。さらに、2021年のCGRP抗体関連薬の登場は、予防療法の効果を大きく高め、患者さんの日常生活に大きな変化をもたらしました。
しかし、片頭痛の治療は薬物だけではありません。薬物療法が難しい方、あるいは薬の効果をさらに高めたい方のために、非薬物治療にも有効性が示されている方法が多数存在します。今回は、当クリニックでも重要視している、非薬物治療についていくつかご紹介します。
1. 行動療法:生活習慣と心のアプローチ
行動療法は、患者さん自身が積極的に治療に参加する手法です。
リラクセーション法やバイオフィードバック(筋電図、体温):ストレス管理や自律神経の調整を目的とします。
認知行動療法:痛みの捉え方や対処スキルを学ぶことで、片頭痛発作への不安や恐怖を軽減します。 これらの方法は予防的薬物療法との併用で特に効果的とされており、特に小児の片頭痛管理においては、認知行動療法が有効であるという報告が多くあります。
2. 理学療法:身体への働きかけ
身体に直接働きかける治療法も有効性が示されています。
有酸素運動:継続的な運動は、片頭痛発作の頻度や重症度を軽減する効果が報告されています。
鍼治療:特定のツボへの刺激が、片頭痛の予防に役立つ可能性が示唆されています。
カイロプラクティック:専門家による背骨や関節の調整が、片頭痛の緩和に繋がる場合があります。
3. ニューロモデュレーション:神経機能の調整
最新の医療技術として、神経の活動を電気や磁気で調整するニューロモデュレーション(神経変調)も注目されています。
経頭蓋磁気刺激(TMS):頭部から大脳皮質を磁気で刺激し、痛みの伝達に関わる神経回路を調整します。
経皮的三叉神経刺激装置や迷走神経刺激:三叉神経や迷走神経といった、頭痛に関わる神経を外部から刺激する手法で、急性期治療や予防に用いられています。
4. 健康食品・サプリメント:補助的な役割
特定の栄養素が片頭痛の予防に有効であることが研究で示されています。
コエンザイムQ10
ナツシロギク(フィーバービュー)
ビタミンB2(リボフラビン)
これらは、薬物治療を補完する形で、発作の頻度や程度を軽減する目的で利用されます。ただし、サプリメントの利用にあたっては、必ず医師にご相談ください。
結論:薬物と非薬物療法の最適な組み合わせを
片頭痛治療を成功させる鍵は、適切な薬物療法と、今回ご紹介した非薬物療法を患者さんの状態に合わせて最適に組み合わせることです。特に薬物治療に抵抗がある方や、薬の効果が限定的な方にとって、非薬物療法は生活の質(QOL)を大きく改善する可能性を秘めています。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりのライフスタイルや痛みの特性を丁寧に把握し、薬物治療と非薬物治療の両面から、最適なオーダーメイドの治療計画をご提案しています。
ご自身の片頭痛治療についてご不明な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
