2026年8月28日
「薬を飲んでいるのに頭痛が続く?「薬剤使用過多による頭痛」とは
「頭痛がすると薬を飲む」というのは、頭痛に悩む方にとって自然な対処法です。ところが、頭痛が頻繁になるにつれて痛み止めを飲む回数が増え、いつの間にか「薬を飲んでも頭痛がする」「薬が切れるとまた頭が痛くなる」という状態になることがあります。
このような場合に考えられるのが、**薬剤使用過多による頭痛(Medication-Overuse Headache:MOH)**です。
薬剤使用過多による頭痛は、もともと片頭痛や緊張型頭痛などを持っている方に起こりやすく、適切な治療を行うことで改善が期待できます。
薬を飲みすぎると、なぜ頭痛が悪化するのでしょうか?
頭痛が起こると、私たちは「痛みを止めたい」と考えて鎮痛薬を服用します。
最初のうちは薬によって痛みが軽くなります。しかし、頭痛が頻繁になると薬を使用する日も増えていきます。そして、鎮痛薬を繰り返し使用することで、脳が痛みに対して過敏な状態になり、少しの刺激でも頭痛を感じやすくなることがあります。
すると、
頭痛がする → 薬を飲む → 一時的に良くなる → また頭痛がする → 薬を飲む
という悪循環が生じます。
これが薬剤使用過多による頭痛の大きな特徴です。
「薬が効かなくなったから、もっと強い薬が必要なのではないか」と考えてしまう方もいますが、実際には薬を使う
回数そのものが頭痛を長引かせている可能性があります。
どのくらい薬を飲むと「使いすぎ」なのでしょうか?
薬剤使用過多による頭痛では、単純に「1日に何錠飲んだか」だけではなく、1か月のうち何日薬を使用しているかが重要です。
一般的な診断基準では、頭痛が月15日以上あり、さらに頭痛の治療薬を3か月を超えて定期的に使い、その使用頻度が一定の基準を超えている場合に薬剤使用過多による頭痛が疑われます。
薬の種類によって基準が異なります。
代表的な目安
アセトアミノフェン、イブプロフェンなどの一般的な鎮痛薬:月15日以上
トリプタン系薬剤:月10日以上
複数の鎮痛薬を組み合わせて使用している場合:月10日以上
鎮痛薬とトリプタンなど、複数種類の薬を使用している場合も注意が必要
ただし、これはあくまで診断上の目安です。
「月10日未満なら絶対に問題ない」という意味ではありません。頭痛の回数が増えてきた、薬を飲む日が徐々に増えている、薬が以前ほど効かなくなってきたという場合には、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
どんな薬が原因になりますか?
薬剤使用過多による頭痛は、さまざまな頭痛薬で起こる可能性があります。
例えば、
市販の頭痛薬
アセトアミノフェン
ロキソプロフェン
イブプロフェン
アスピリン
複数の成分を含む鎮痛薬
トリプタン系薬剤
などです。
特に市販薬は薬局などで簡単に購入できるため、「頭が痛くなったら飲む」という習慣になりやすく、知らないうちに使用頻度が増えてしまうことがあります。
また、「病院でもらった薬だから大丈夫」とは限りません。処方薬であっても、使用頻度が多ければ薬剤使用過多による頭痛につながることがあります。
「頭痛があるから薬を飲んでいるのに……」という方へ
薬剤使用過多による頭痛の患者さんには、
「薬を飲まないと頭痛がひどくなるから、飲むしかありません」
とおっしゃる方が少なくありません。
これは当然のことです。頭痛があるのに薬を我慢することは簡単ではありません。
重要なのは、単純に「薬をやめればよい」と考えるのではなく、なぜ頭痛が頻繁に起こるようになったのかを調べ、頭痛そのものを減らす治療を行うことです。
特に片頭痛の場合には、頭痛が起こったときに使用する「急性期治療薬」だけでなく、頭痛が起こる回数を減らす「予防治療」が重要になることがあります。
治療は「薬をやめる」だけではありません
薬剤使用過多による頭痛の治療では、原因となっている薬の使用を減らすことが基本となります。
しかし、急に薬を中止すると、一時的に頭痛が強くなることがあります。また、吐き気や不安感などの症状が出る場合もあります。
そのため、薬の種類や使用状況、もともとの頭痛のタイプなどを確認したうえで、患者さんに合わせた治療方針を立てることが大切です。
必要に応じて、
① 使いすぎている薬の整理
② 頭痛が起こったときの適切な治療
③ 頭痛を減らすための予防治療
④ 生活習慣の見直し
などを組み合わせて治療します。
片頭痛が背景にある場合には、従来の予防薬に加えて、CGRP関連薬など新しい予防治療が選択肢となる場合もあります。
頭痛日数を記録してみましょう
薬剤使用過多による頭痛を防ぐためには、**「頭痛が何日あったか」「薬を何日使用したか」**を記録することが非常に役立ちます。
例えば、
頭痛があった日
頭痛の強さ
頭痛が始まった時間
使用した薬
薬を飲んだ時間
薬を飲んだ後にどの程度改善したか
などを記録しておくと、頭痛のパターンが分かりやすくなります。
スマートフォンのアプリやカレンダーを利用しても構いません。
特に重要なのは、「薬を飲んだ日」を記録することです。
「毎日ではないから大丈夫」と思っていても、1か月単位で見ると薬を使用している日がかなり多くなっていることがあります。
このような場合は一度ご相談ください
次のような症状がある方は、薬剤使用過多による頭痛の可能性があります。
月に何度も頭痛が起こる
頭痛薬を飲む日が増えてきた
月10日以上、頭痛薬を使用している
薬を飲んでも頭痛がすっきりしなくなった
薬が切れると再び頭痛が起こる
以前より強い薬を使うようになった
市販の頭痛薬を常用している
頭痛のために日常生活や仕事に支障が出ている
このような場合は、「薬を飲みすぎているだけ」と自己判断せず、一度頭痛専門の医療機関にご相談ください。
薬剤使用過多による頭痛は、改善できる頭痛です
薬剤使用過多による頭痛は、頭痛に悩む方にとって非常につらい状態です。
しかし、原因となっている薬の使用方法を見直し、もともとの片頭痛などに対して適切な治療を行うことで、頭痛の頻度を減らしていくことが期待できます。
大切なのは、「頭痛が起きたら薬を飲む」という対処だけを繰り返すのではなく、「そもそも頭痛が起こりにくい状態をつくる」ことです。
「最近、頭痛薬を飲む回数が増えた」と感じたら、それは頭痛治療を見直すタイミングかもしれません。
頭痛の種類や薬の使用状況によって適切な治療方法は異なります。自己判断で薬を急に中止するのではなく、現在使用している薬を持参して医師に相談することをおすすめします。
頭痛薬を減らすことだけが目的ではありません。
頭痛そのものを減らし、薬に頼りすぎなくても生活できる状態を目指すことが、薬剤使用過多による頭痛の治療の目標です。
